第1章 セクシーサービス事始め

10/36
前へ
/74ページ
次へ
ぼろ儲けができなくなって尾羽打ち枯らした、と情けなく呟くのを読んでる方も何となく笑えてきて、気分が明るくなってくる。そうだよなぁ、そもそもあんな儲け方でみんな分け前に預かれたことがおかしかったんだ。あれは一種のバブルで、いい思いできたことはラッキーだったけどそれはそれとして再現を願うんじゃなくて切り替えて前に進むしかない。そういう気持ちになれるってことは思えばその人には読んでる人を動かす力、言うなれば文才があるってことになる。その時点でわたしなんかとは違うってわかりそうなものだが、ここにも同じ憂き目を見た人がいるって安心感を得たわたしは珍しく気楽にコメントを書き込んだ。 どういうわけかその人からダイレクトにコメントへの返答をもらった。ある意味災難ちゃ災難だったけど、まあいい機会だと割り切ってお互い身の振り方を考えよう、前向きに捉えるしかないよねって内容で特にどうってこともない。こっちが女だからナンパ目的って感じでもなかったので更に答えを返した。そうやって文章を見てもらったり、今までの記事を見てもっとこうしたらとアドバイスをもらったりしているうちに自然と気心が知れて親しくなっていった。 オフで会うようになっても青山くんは別にわたしを口説いたりはしなかった。そういう目論見はそもそも最初からなかったらしい。 「てか、普通に男だと思ってたからさ。ジツオってなんだよ、珍しい名前だなあとしか。…記事書くにも記名するんなら片仮名か平仮名にしときゃよかったのに、名前。漢字の字面、なんか今ひとつ色気ないんだよ。せっかくミオなんて可愛い響きなのにさ」 「しょうがないでしょ、本名なんだから」 カウンターに並んでグラスを弄びながらわたしは不貞腐れた。今までこの名前で生きてきて字面が可愛くないなんてわざわざ指摘されたことない。別に無理読みでもないし。自分じゃ全然違和感ないのに。     
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加