第1章 セクシーサービス事始め

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「実直に生きる、で実生だもんな。いや、いい名前だと思うよ、もちろん。お前や俺の暮らしぶりが実直かどうかは何とも言えない面がなくもないけどさ」 「そうかなぁ。…そりゃ、まあ。浮草稼業っていうか、隙間産業かなあ。確かに」 なければないで誰も困らないって言えばそうかも。わたしは肩をすぼめてあまり強くもないアルコールをちびちびと口に運んだ。あれから一年以上経って、閉鎖と立て直しを迫られたサイトもリニューアルが済んでちらほらと再開され始めている。だけどだいぶ規模も縮小されていたり、記事のチェックも厳しくなっているから今まで通りとはいかない。少なくともわたしレベルのライターにとってはそうだ。 そこは明暗が分かれた。残念ながら、というか当然というか。青山くんの方は以前のバブル期の水準には達さないとはいえそれでもコンスタントに仕事がある。名前を前に出したコラム的なものも増えた。ブログも相変わらず人気がある。その点わたしは、ねぇ…。 「まあ仕方ないのかなぁ。青山くんの文章、そこはかとなくいいもんね。どこがどうって上手く言えないんだけど。肩に力が入ってなくて、読んでて気持ちが軽くなるし。阿呆なことばっか言ってるなあってふっと頬が緩んじゃう感じで。何の役にも立たないんだけど」     
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