第1章 セクシーサービス事始め

16/36
前へ
/74ページ
次へ
「いや、全然そんな。やらしい話とかじゃないんだよ。なんでも何年も前にある小説家のエッセイでちょっと話題になったタームで。家で一人になった時、家事をするのにあえて服を全部脱ぐって習慣のある人がいるらしいってなったら、実はわたしもって名乗り出る人が相次いで…、って話がアメリカであった、って書いたらさ。日本からも実は自分も…って打ち明ける人続出になった、っていっときちょっとした盛り上がりを見せたんだ。向井、やったことある?一人暮らしだろ。正直、誰も見てない時とか」 なんか目の光がちょっと…。身を乗り出すな、こっちに。 わたしは椅子の上で身をずらしつつ正直に答えた。 「ないよ。誰も見てなくたってそんなん落ち着かない。なんか、無理」 「そうかぁ?風呂入る前とかあととか。これやってなかった、とか急ぎだったとか思い出してついそのままちゃっちゃと…、とかさ。なんかあるだろ、経験。思い出してみてよ」 気の重い話題が何となく逸れたのはいいけど。新たなトピックがこれじゃあなぁ。やけに活き活きと目を輝かせて性急に迫ってくる青山くんもちょっと怖い。今ひとつ乗ってこないわたしをかき口説くように前のめりに続ける。 「別に、エッチなことでも何でもないじゃん。ただ服が汚れるのが嫌とか身軽に動きたいとかそういう理由の習慣なんだよ、多分。実はちょっとやってみたい…とか。そういう気、ない?恥ずかしいとかないだろ。普通に家事するだけなんだし」 「…それがオリジナルの視点?」 引き引きで口ごもると奴はちょっと我に返ったらしく、顔を改めて居住まいを正した。     
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加