第1章 セクシーサービス事始め

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一度思いきって切り出したら箍が外れたのか。やけに諦めが悪い。わたしは口から出まかせにふっかけた。 「…十万」 「十万ね。わかった」 こら! 「何きっぱり承諾してんだ。そうじゃないだろ、さすがにそれは払えないよって金額じゃないのかい。大体、取材を離れてって言ってた気がするけど。記事は結局書かないってことか。じゃあそれは何の名目の支出?何に対する謝礼なのよ」 問い詰めながら、そうか、ぽんと十万出せるんだ。やっぱりだいぶわたしとは懐具合が違うな。わかってたことだけど、と少しショックを受ける。 奴はわたしの胸の内など知る由もなく、真剣な表情を崩さずこちらを見据えて答えた。 「うーん…、趣味の支出?純粋に自分の愉しみのためっていうか。写真撮らせてもらったりインタビューしたりしないよ。ただ黙々と作業するとこ見せてくれたらいい。自分の部屋にいる感覚でこっちの存在忘れてくれたら尚いいよ」 「…デリヘルとか、風俗に払う感じ?」 わたしは呆れてため息をついた。 「思うんだけど。いっそ、それこそデリヘルの人とかに頼んだら。服を脱ぐのは込みの仕事でしょ。わたしみたいな普通の人間には無理だよ。他人の前で身体晒すとか全然ない。そのあと、あんたと顔合わせんの嫌になっちゃう。関係終わるよ」     
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