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一度思いきって切り出したら箍が外れたのか。やけに諦めが悪い。わたしは口から出まかせにふっかけた。
「…十万」
「十万ね。わかった」
こら!
「何きっぱり承諾してんだ。そうじゃないだろ、さすがにそれは払えないよって金額じゃないのかい。大体、取材を離れてって言ってた気がするけど。記事は結局書かないってことか。じゃあそれは何の名目の支出?何に対する謝礼なのよ」
問い詰めながら、そうか、ぽんと十万出せるんだ。やっぱりだいぶわたしとは懐具合が違うな。わかってたことだけど、と少しショックを受ける。
奴はわたしの胸の内など知る由もなく、真剣な表情を崩さずこちらを見据えて答えた。
「うーん…、趣味の支出?純粋に自分の愉しみのためっていうか。写真撮らせてもらったりインタビューしたりしないよ。ただ黙々と作業するとこ見せてくれたらいい。自分の部屋にいる感覚でこっちの存在忘れてくれたら尚いいよ」
「…デリヘルとか、風俗に払う感じ?」
わたしは呆れてため息をついた。
「思うんだけど。いっそ、それこそデリヘルの人とかに頼んだら。服を脱ぐのは込みの仕事でしょ。わたしみたいな普通の人間には無理だよ。他人の前で身体晒すとか全然ない。そのあと、あんたと顔合わせんの嫌になっちゃう。関係終わるよ」
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