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「だいじょぶ、そこは本筋じゃないから。指で窓枠つ、となぞってここにまだ埃が、とか。汚れが落ちきってないじゃんとか文句言わないよ。ただ俺を丸無視して動き回ってくれればいい。それをかぶりつきで見せてくれればさ。…あー、まじ楽しみ。ちょっと想像しただけで。ぞくぞくしちゃうなぁ…」
犬みたいにぶるっと身を震わせるな!なんか、気色悪い。
わたしは次の飲み物を何にしようか迷いつつウェイターに向かって片手を挙げながら内心少し不安になった。普通に家事するとこ見せるだけでお金がもらえるなんて、ちょっと割のいいバイトみたいでラッキーな気もするけど。相手がこれじゃ、つい引くというか。嫌な予感する…。
「はい。じゃ、これ着て」
それから数日後の昼下がり。
初めて訪れる青山くんの部屋に上がり込んだわたしは、顔の前に服の入った袋を突きつけられて目が点になった。
「え。…着替えるの、わざわざ?」
「うん。ここで、俺の目の前で着替えてくれてもいいけど。やっぱりそれは嫌…、か」
「嫌だね」
きっぱり言うと、それはあっさり諦めて隣の部屋へ案内してくれた。どう見ても奴の寝室だけど、ありがたいことにそのままベッドに押し倒されたりはしなかった。じゃ、着替え終わったらこっちにきて、と言い残してドアを閉めて出て行く。
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