第1章 セクシーサービス事始め

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新卒で入社して即編集、なんてそう簡単なもんじゃない。配属されたのは営業だった。 書店を回ってご機嫌伺い、挨拶回り。そんなに需要があるとも思えない吹けば飛ぶような本を手を替え品を替えかき口説いて何とか棚に置いてもらうのが仕事。だけどよく知らない人と話すのが死ぬほど苦手だ。そうは言っても今思えば編集の仕事だってコミュニケーション能力がなかったら全然勤まらないのだが。 学生の時はほんの数えるほどの友達と何とか接触を保ち、最低限のやりとりができれば一応やってはいけた。講義にきちんと出て真面目にレポートやテストに取り組めば友達なんか少なくてもサークルに馴染めなくて幽霊で終わっても誰にもなんとも言われない。卒業するまで特に支障もなく無難に味気なく終わったから、社会人になっても何とか普通にやっていけるだろう。みんな何かしら仕事しているんだし、自分だけできないはずなんかない。そうとしか思わなかったし、今考えると楽観的だった。     
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