第三話  夢のお告げ

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第三話  夢のお告げ

 (幽体離脱)  それはまさに、幽体離脱!  アタシの魂は身体を残し、時空の壁を越えた。  当然、残された身体はグッタリとした状態になって、恒星の腕の中に取り残されたのである。  その恒星はと言えば。彼の腕の中でグッタリと気を失ったセイラに大慌てだった。  「大変だ」  「マイラ、来てくれ」  「セイラが気を失ったんだッ」  その叫びを聞いたマイラが、家政婦のスミス夫人を引き摺るようにして、全速力で駆け付けて来た。  「旦那様、奥様をそっと長椅子に寝かせましょう。急いで主治医をお呼びします」  また書斎を飛ぶ出していった。  スミス夫人がセイラの衣服を緩める。  「僕がいけなかった。ついセイラが妊婦だと言う事を忘れて、キツイ事をしたんだ」  キツク抱く竦めたことを、恒星は猛反省した。オロオロと長椅子の上のセイラの周りを歩き回る姿は、とてもじゃないが鬼のような厳グループの最高責任者には見えない。  「旦那様、落ち着いて下さい」  スミス夫人が恒星を叱った。  「出血している様子はありませんし、脈拍もシッカリしています」  そこへウィラー博士が現れて恒星を落ち着かせた。彼の弟は先月、四人目の坊やのパパになったのだ。そんな関係で、すぐ側で妊婦を見慣れている。  「騒がないのが大事だよ。気を失う事も偶にはあるさ。長くその状態が続けば問題だがね、妹の場合はたいがいはちょっと眠って、そして目覚める」  「ほら、あの白雪姫みたいにね」  「君のキスで目覚めるのさ」  ウィラー博士の言葉に、やっと恒星が微かに微笑んだ。  「だから主治医の診察を受けた後は、ベッドで親鳥が雛を温めるように、奥さんを大事に抱いていたまえ」  クスッと笑って助言した。  「奥さんは初めての妊娠だ。身体がまだ子宮に慣れていないからね」  優しくソフトに、偶には甘やかしてやるのが大事だと、言って聞かせたのである。  「君は独身だろう。本当に上手く丸め込んだなぁ」、パーシーが感心した。  「忘れたのかい。僕は一年中、言うことを聞かない学生の空っぽの頭に、知識と宇宙の常識を詰め込んでいるんだぜ」  「恒星は、奴らに比べれば優等生さ」  そこへ主治医のネットテレビを使った問診が始まり、恒星は彼に縋り付くように指示を仰いでいた。  もっともその内容は、ウィラー博士の言ったこととほとんど同じ。  恒星はセイラを寝室に運び込むと、ベッドに寝かせた後で。美女を護る野獣のように過保護な愛でセイラを包み、腕の中に抱き寄せるとウトウトと微睡んだのである。  「ああ、セイラ」  「早く目覚めて僕を安心させておくれ」  セイラの髪をなでながら、呪文のように何度も呟いたのだった。
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