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手首にくっきりと浮かぶ細い手形。
「人間で言うところの、ホラーだね。」
「お前がそれを言うか。」
「なんで?飼い猫と話せるなんてメルヘンでしょ?」
しれっと夜魅が言う。
「猫好きにはたまらないよね。」
そう付け加えた夜魅は、得意げに2本の尻尾をたてる。
喋る猫は、どちらかと言えばホラーだと思うのは柊平の気のせいだろうか。
「この痣、消えると思うか?」
「女の子に腕を掴まれたくらいで痣になったなんて、恥ずかしくて人間には言えないもんね。」
これだけハッキリした手形の痣を見られたら、恥ずかしというよりそれこそ他人には得体の知れないものに見えるだろう。
「鏡子にも相談してみるか。」
柊平は、コタツの上にあるミカンを2つ3つパーカーのポケットに入れて立ち上がる。
「賛成。女心は複雑だからねぇ。」
そう言う夜魅は廊下を渡っていく。
柊平もそのあとを追って、西の離れに向かった。
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