4章 奇跡

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 まだ、人々の世が平穏の中にあった頃。 小さな森で遊ぶ中、少女は小さな社を見つけた。  人に忘れ去られたのだろうその社は、見るも無残に朽ち果てていて。 見た者に畏怖の念を抱かせるどころか、薄気味悪さを感じさせただろう。  なのに少女は驚くべき行動に出た。一目散に駆け出していった後、 水がたっぷり入った桶と清潔な布を手に戻ってきた。 そして丹精込めて社を清掃したのだ。  何度となく布を黒く染め、そのたびに川と社を往復し、 数時間かけてようやく清め終わった後。 少女は疲労に震える両手を、ゆっくり掌を重ね合わせ、 ほどけるような笑顔で語った。 「忘れられるのって、悲しいよね」 「大丈夫だよ。これからは私が毎日参拝するから」 「だから。神様も寂しくないよ」
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