第1話 足?もしや臭いのか?

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第1話 足?もしや臭いのか?

「すぅーーーー。はあぁーーーー」  俺はハロワから外に出ると、思い切り息を吸い込み、大袈裟にため息をついた。  職業安定所ー通称「ハロワ」  もう半年は通っているな。  今のところ全戦全敗。おお。ある意味、大記録達成だよ。  世間じゃ景気回復だの売り手市場だの騒いでいるが、本当に同じ世界の話なのだろうか。    ……俺だけ異世界にいるのではなかろうか。  いや、一昔前の異世界ならいざ知らず、最近の異世界はもっとヌルいはずだ。  てことは現実って事だ。  俺の名前は島津 洋介。  以前働いていた真っ黒な会社を辞めて、はや半年。  再就職を目指し、ハロワに毎日の様に通っている。  我ながら健気。  だが、面接どころか履歴書すら送ることが出来ない状態が続いている。  なんでだー。  生活費もそろそろピンチだ。  自由気ままな独身暮らしで、必要最低限ではいいとは言え、入ってくるお金は失業手当だけ。  あれ? 俺の状況って実はヤバイ?  でもさー。  あれはないでしょー。  あれというのは先程、再就職に向けて相談をしていたハロワの職員の事だ。  目の前には神経質そうな、ザ・お局様といった女性が睨み付けるように俺の履歴書を見ている。  その表情には憎しみさえ見てとれる。  縁無しフレームの銀眼鏡がキラリと光る。 「……あなたねぇ」 「はい?」 「はいじゃないわよ。30過ぎて資格も無い、経験も無い男が、あれこれ贅沢言えると思ってるの?」  おふぅ。クリティカルヒット!  俺は慌てて答える。 「あ、えーと……いや、でも履歴書送ってみなきゃわからないじゃ……」  俺の反撃には弱キックの威力すらない。  ちなみに俺が出した条件は  ・週休三日  ・年収七百万以上  ・未経験者登用有  ・残業無……etc  自分でもわかっちゃいるが無策無謀である。 「送るのは勝手ですけど紙と時間の無駄よ」  吐き捨てる様にお局様が言う。
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