第1話 足?もしや臭いのか?

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 おぉぅ。  なんと言う攻撃力。  大した防御力を持たない俺のHPをガリガリ削っていく。  KO寸前でうなだれる俺。HPゲージはもう真っ赤だ。  あと弱パンチ一発でも当たれば俺は地面に倒れ伏すだろう。  お局様はふんっと言い、カチャカチャとキーボードを叩き、PCを眺めている。  そしてふっと顔を俺の方向に向けると唇が動く。  来るぞっ!  防御しろっ!ショックに備えろっ! 「ここなんかどうです? 芋を煮る工場。あなたにぴったり」  KO!!  かくして俺は今日もまた、ハロワを後にしたのだった。 ◆  がっくりと肩を落とし、ハロワを後にする俺。  額に流れる汗を拭きながら、ふと喉の乾きに気付く。  今は8月だ。 「ミーン。ミーン。」  セミがうるさいな。 「カナカナカナカナカナッ!」  うぉっ!突然鳴き出すセミにビクッとする。 「やかましいっ!」  セミは驚いて逃げていった。  セミには強気な俺だ。あー同じ台詞をさっきのお局様にも言えたらどんなにスッキリする事か。  しかし暑いわー。  歩いてるだけで汗が止まらない。  なんでも連続猛暑日の最長記録を更新したらしい。  そういえば、熱中症に注意しましょう、水分補給が大事です!と、今朝のニュースでもやっていたな。  だが、飲み物を買うなんてとんでも無い。  確か財布には小銭すら無かったはず。  失業手当ての支給日まであと3日もある。我慢せねば。  雲ひとつ無い青空がなんだかとっても恨めしい。  おまけに腹も減ってきた。  パチンコで一攫千金を・・と考えたが、小銭すら無いんだった。はぁ。  右手には大きな公園が見える。  この手だけは使いたくなかったが……  公園で水をたらふく飲んで腹の足しにするか……
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