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「あんた、なにしてんの?」
低く、どこかいらだったような声に振り返り、私は短く悲鳴を上げた。
そこにいたのはうちの学校で一番の不良・不破くんだったから。
シャツはいつもズボンからはみ出して、遅刻サボりは日常茶飯事、茶色の三白眼は吊り上がってて、髪は金色(ただ最近は理由があって染められないのか、生え際から黒髪が伸びてきているけど)。
先生からは目を付けられ、生徒からは遠ざけられる、マンガかってくらいのTHE・不良。
一方、私は典型的ないじめられっ子。
引っ込み思案で陰気。話しかけられるといつもどもって何も言えなくなる。クラス替えしてしばらくはそれを面白がって社交的男女混合グループからからかわれるだけだったけど、その中のリーダー格女子から「あんた見てるとイライラする」と言われて以降、徐々に陰湿ないじめに発展した。
今現在、裏庭にいるのもそのいじめでボロボロにされ、ここに捨てられていた教科書を拾いに来たから。
まさか彼らよりも恐ろしい、不破くんに会うなんて。
私がまさかの不幸にフリーズしていると、不破くんはさっきよりも苛立った顔になった。
まずい。何か言わなきゃ、と慌てて口を開く。
「ごっめん、な、さい・・・っ。あ、のわ、わたし・・・っ教科書、ぼろ、ぼ・・・っ」
うまく言葉が出てこない。これ以上彼を怒らせちゃダメだとわかっているのに不破くんが眉間に皺を寄せて私を見ていて、その鋭い目がさらに私の喉を圧迫して呼吸すらし辛くなる。
と、不破くんが突然私の方へ近づいてきた。
不機嫌な顔のままで。
ああ、どもったから怒らせちゃったんだ。どうしよう。私、殴られるのかな。いつもあの子たちが振り回してくるモップやホウキより痛いかな。この前の調理実習の時にわざと腕に掛けられた熱湯より後を引く痛みかな。
あまり、痛くしないでほしいな。
不破くんの手が私に伸びる。
ああ、私・・・死んじゃうんだな。
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