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怒らせたと思って震えていた体も思わぬ問いに固まった。
不破くんはそんな私にさらに眉間に皺を寄せて答えを催促した。
「だから、どもるってなんだよ」
「あ・・・え・・・っと・・・言葉がつかえて、声が出にくい状態のこととかそんな、意味・・・だ、ったと・・・」
「へぇ、そうなのか。知らなかったわ」
答えを聞くと、不破くんは面白いことを聞いたかのように笑う。
さっきも思ったけど、不破くんってよく笑うな。しかも笑うとくしゃってなるから、なんか可愛い・・・?面と向かっては言わないけど。
「あ、の・・・怒って、ないの?」
「は?なんで?」
「わ、私の・・・しゃべ、りかた・・・イライラしな、いの?」
「別に?」
サラッと言われてしまった。
私の口調をからかう様子もない。ううん、不破くんはむしろ気にしていない。
高校入学以来、こんなこと初めてだ。
しかも、あんなに怖がってた不破くんにそんなこと言われるなんて。
思わぬことに言葉を失っていると、不破くんは私の隣に勢いよく座った。
「あんたのしゃべり方で誰かが迷惑したのかよ」
「・・・いつも、イライラするって言われる・・・」
「そいつの感じ方次第だろ、そんなの。さっきも言ったけど、あんたちゃんと俺と会話出来てるじゃん。受け答え?もしっかりするし、余計なことも言わない。俺としては楽だけど」
「・・・・・・ちが、う。よ、よけ、いなこと・・・言って・・・嫌われたく、ないからで・・・」
「ふぅん、それはよくわかんねぇな。けど・・・まぁ、確かにあんまりビクビクされると俺もイラっとするけど、あんたちゃんと俺の目見るじゃん」
「え?」
「俺と面と向かってるとほとんどの奴がすぐ目をそらすのに、あんたは多少そらすことはあっても結構俺の目を真っすぐ見てる。それだけでも多少は好感持てるぜ?」
私の言い訳を、不破くんはことごとく自論で反論してくる。
違うよ。目をそらさないのは逸らすと怒られるからだよ。苛立たせないようにする処世術の1つなんだよ。
そんな、強い理由じゃないんだよ、不破くん。
そう心の中でつぶやくと同時に、私の目からなぜか一筋の涙がこぼれた。
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