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突然泣く私に気付くと、不破くんはいきなり慌てふためきだした。
「は!?なんで泣くんだよ!!俺なんか言った!?」
「ち、ちがう、の・・・っ。わ、私の・・・わるい、とこ・・・っぜん、ぶ・・・きにし、ないっ、で・・・い、て・・・っくれる、から・・・っ」
「は!?なんだよそれ。ど、ども?るのだって目を見るのだって別に悪いとこじゃねぇだろ!つか、そんなことで泣くなよ!俺が泣かせたみたいだろうが!!」
わたわたと右往左往した後、不破くんは慌てて私の頭を乱暴に撫でて慰め始めた。
初めて見る不破くんの動揺した様子に私は泣きながらも笑ってしまう。
うん、そうだよね。不破くんは思ったことをいつもみたいに口にしてるだけ。不破くんにとってはきっと、たわいのない発言。
でも、私はあなたのそのたわいのない本音に救われたの。
私は涙を袖で拭って、不破くんをまっすぐ見ながら言った。
「ありがとう、不破くん」
私がそう言うと、不破くんは一瞬動きを止めた後、ふっとさっきみたいにクシャっと笑った。
「多少は元気になったみたいじゃん。あっ、そういやあんたの名前聞いてなかったよな」
「有木美優、だよ。有るに木、美しいに、優しいで・・・ゆうき みゆ」
地面に字を書いて、初めて自己紹介すると不破くんは何度か頷いて私の方を向いて言った。
「じゃあ美優って呼ぶわ。なんか綺麗な名前だな、あんたの名前」
「・・・私の、唯一の好きなとこなんだ」
「そっか。じゃあもっと好きなとこ増やさないとな」
そう言って不破くんは私の頭をまた乱暴に?き乱す。
いつもより優しく乱される髪。初めて髪に触れられて嬉しいと感じた。
これが、私と不破くんの、出会い。
これから私の価値観を変えてくれる、神様みたいな人との「はじめまして」――――。
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