10人が本棚に入れています
本棚に追加
ナザルは,母の亡骸を前にして憎悪の念に駆られ誓った。
「この歪んだ支配者どもを皆殺しにしてやる…」と。
【エルム王国とゲイメン王国との国境を隔てる河川にて】
ある男が,深夜,エルム王国とゲイメン王国を隔てる河川を越境しようと必死に泳いでいた。
男は懸命に泳ぎながら「あと200メートルほどでエルム領だ。水が冷たいし,流れも速い。このままでは死んでしまう。」と思った。
どうにかして男は、エルム領の河川敷に辿りつくことができた。
男:「ハァ…ハァ…ハァ…。ついに俺は国境を渡ったぞ。合流地点は、この先だ。」
男は茂みの中に入り北に向かうと、うっすら人影が見えてきた。
男が人影に近づいていくと、兵士の死体が目に入った。
男「これは!合流する筈のエルムの兵士!」
男がさらに人影に向かって進むにつれ、エルム兵の死体がゴロゴロ転がっていた。死体は首が切断されていたり、頭部の一部が吹き飛んでいる者もあった。
男「まさか、気づかれたか!」
男が後ろを振り向き逃走しようとすると、背後にも数名の人影が見えた。
人影の1人が男に近づいてきた。
次第に人影の姿が露わになった。
その人影は、兜と鎧をまとい、右手に大鉈を左手に盾を持った大男,ジャッツと呼ばれる男だった。
男 :「ジャッツ…お前ら『観察者』のしわざか・・・」
ジャッツ:「アストスでの誓いを破れると思ったか?」
男 :「ようやくここまで来たのに…エルムで一番の金持ちになれたのによぉ!」
と言うと、男は短剣を抜いてジャッツに襲い掛かった。
ジャッツは男の突撃をサラリと交わし,男の後方から大鉈を力強く振り落とした。
その瞬間、男の頭部半分が叩き切られた。
ジャッツの力は異常だった。
そして、ジャッツは人影に向かって言った。
ジャッツ:「終わった。アストスに帰還する。」
最初のコメントを投稿しよう!