露、涙、雨。

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転びそうになった手を、私は掴む。 「どうぞ、このまま置いて行って下さい」 何度目の懇願か、それでも私はそなたの手を離すつもりはない。 汗ばんでいるのか露で濡れたのか、足袋の先は不快極まりない。 ここで討ち死にするのも、潔いのかもしれぬ。 だが、ここで死すれば彼の女は敵の手に落ちる。 敵の手に落ちる位ならばと、そなたは自死を選ぶ女であるのは私が誰よりも承知だ。 「北へ、北へ逃れれば藤原様が必ずや助けて下さいます。 この深い山、お一人ならば抜けられます。 だからどうか、生き延びて下さいませ」 嗄れた愛しい君の声を、聞いていないはずはない。
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