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追っ手は何処だ。
深い森のおかげで雨を遮れる。
しかし冷える体は、追っ手だけでなく私達の体力も等しく削る。
あれほど親しくしていた木の根が、これほど疎ましく思ったことはない。
滑りやすく、濡れた木の葉。
何度となく躓く君を支え、また開きそうになった唇を、私は自分の唇で塞いだ。
乾いた唇ゆえに、快楽とは程遠いものではあったが。
熱い息が、互いの奥から、微かに揺れる命の灯火を思わせる。
それでも君は愛しそうに涙を一筋流した。
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