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「これから先、雨の度に思い出すのだ」
命令、それよりも呪いと言うべきか。
汚れた美しい頬を親指で強く擦る。
今までは壊すまいとそっと触れていたが、今はただ感じたい。
愛しいそなたの感覚を、滅びゆくこの身に染み込ませておけば、来世もまた共になれるのではないかと願いをこめて。
「私がいかにそなたを愛でておったか」
別れを感じているのであろう、重ねられた震える手。
涙で、滲む。
心細い思いをさせたくないが、私を失って悲しむ姿を想像すれば、心は満たさせる。
そなたもまた、私を愛しておったと。
巷では強き女と見られているが、人一倍強がりで。
私と共に戦場を駆け抜ける勇ましい姿と見られているが、本当は私が心配で堪らなくて。
愛しさゆえに君を死に誘いそうになる。
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