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「あのな、落ち着こう片桐くん」
「君のこと、本当に好きだったんだ。だけどこんな僕じゃ受け止めきれなくて…」
え、え、待って!泣…っ?こんなとこで?!
さらりと金髪を垂らし、大きな瞳からぽろぽろと綺麗な滴を溢して俯く姿はまるで宗教画みたいだ。だが周りの目線が痛い。めちゃくちゃ痛い。
あいつ片桐くん泣かしやがったみたいな視線止めてください、本当濡れ衣なんで。寧ろこっちが泣きたい。
自分で気づいていないだけで、もしかして俺は記憶喪失にでもなっていたのかと疑いたくなる。駄目だ。これ以上話していても何も解決する気がしない。というかこのままじゃあいつ怒ってこっち来ちゃうよ。早く静めないと。
「泣かないでよ片桐くん」
「いいんだ、君が気にすることじゃないから」
「いや確かに俺は何にも悪くないけど何かめちゃくちゃ悪いことした気分だし」
「…!まだそんなに優しくしてくれるんだね?!」
伏せていた瞳が光を少し取り戻し、爛々と輝き出した。
ああ、もう駄目だこれ。逃げよう。逃げたい。逃げるしかない。
「てかさ、友達待たせてるからもう戻ってもいいかな?」
「いいよ無理しないでここに居ても。本当は泣き顔を見られたくないんだろうけど、僕だって辛いんだ」
「話聞けよ。友達待たせてるんだってば」
さっきから駄目だしか言ってないけどマジで駄目だこれ。日本語喋ってるつもりなのに全然通じない。
誰か通訳を、お客様の中に通訳の方はいらっしゃいませんか…?!
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