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五十年以上も前の話しです。
小さな短い巻き毛の犬がいました。その犬はスプートニク二号というロケットに乗せられて人間より一足先に、誰も行ったことのない宇宙に打ち上げられました。名前はライカと呼ばれていました。
それはロシア語で猟犬という意味ですが、それが彼の名前になりました。
「ここはどこだろう? なんでボクはこんな狭いところにいるんだろう?」
ライカはそう思いました。
キカイの中に固定され、ヘンテコな装置を着けられて、身動きがとれないと、ジタバタしていたら、ゴゴゴと音がして、急に頭をグググと押さえつけられました。心臓がバクバクバクと早くなりました。真夏の暑い太陽がすぐ近くにあるような気がするほど、体の中がジジジと熱くなりました。グググと押さえつける視えない手と熱い温度が消えたとき、フッと空に浮いたような気がしました。
「ボクはじっとしているのに、なんだかフワフワだ」
ライカはそう思いました。
しばらくすると浮いたウキウキした気分は消え、目が回るような回転運動に変わりました。
「なんだよこのクルクル」
でもライカには外のことは分かりません。フワフワ、ウキウキ、クルクルを繰り返してウトウトしていました。ふと、小さな丸いお窓の外を覗いたら、小さな星がいっぱい見えました。お月様もすごく大きく見えました。
「ああ、おなかが空いたなあ」
そう思ったときにキカイの中からゴハンがコロコロと出てきました。グルグルをくりかえしながらペコペコなオナカがグルグルとなるころにゴハンが出てきます。
「お月さまとお星さまが、ずっといなくならないのはなぜ?」
ライカはそんなことを考えながら、一日が終わったのをオナカのグルグルの回数でなんとなく知りました。
突然バリバリという音が聴こえてライカは飛び起きました。はげしい音と一緒に大きな夜がやってきました。ライカが閉じこめられていたロケットの壁がはがれてしまったのです。バリバリはライカが見つめるのにアキアキしていた何も無い壁と小さな丸い窓をやぶって大きな景色を見せてくれました。
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