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ライカはすぐ目の前にたくさんのお星さまがあるのにびっくりしました。いつも遠くに見えていた小さなお月さまが近くで大きく見えました。お月さまより大きい青い丸い星がもっと近くにあることにびっくりしました。
ライカを宇宙に送り出した研究者たちは、打ち上げの成功にホッとしたのもつかの間、ライカの乗った人工衛星がロケットの切り離しに失敗し、断熱材がはげてしまい、船内温度が四十一度以上に上昇してライカの命は数時間しかもたないことを知り、肩を落としました。
それから五時間後、ライカの生命反応はしなくなりました。研究者たちはそれでもライカが生きていることを信じて観測を続けました。人工衛星は地球の周りを回っていましたが、突然いなくなってしまいました。研究者たちは地球の引力で大気圏に墜落し燃え尽きてしまったのだと思いました。
肩を落とした人たちは、今度は涙を落しました。
でもライカはまだ元気でした。
あんまりキュウクツなんで暴れていたら、ライカの心臓の音や体温を地球に伝える機械のコードが外れて壊れてしまったのです。フワフワしながらクルクル回る景色を眺めていました。いつもそばに見える大きな青い星を何周か回るうちに、いつもある一点で何かがこっちをさびしそうに見ていることに気がつきました。
「ウルウルした黒い二つの瞳がずっとこっちを見上げている」
ライカはそう思いましたが、その小さな瞳が本当に見えた訳ではありません。そう感じたのです。一人ぼっちでグルグルしているライカのサビシサが、じっと一人ぼっちでウルウルしている誰かのサビシサに引かれたのです。もちろんライカはそのサビシサの引力の原因は知りません。だげど、ある一カ所の上を通るたびに胸がチクンと痛くなるのです。
「誰だろう? ボクを見ていた悲しそうな人は誰だろう」
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