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「ごめんなさい。私、伝えたかっただけですから。塚本さんは、忘れてください」
俺が一人で混乱していた時、水野君がそう言った。その声は、少し震えているようで……
そうだ!水野君はまだ、俺と白石さんの事を誤解したままなんだ。
ちょうど赤信号で、車を止める。できるだけ水野君と向かい合えるように、身体を捻る。
「水野君に、ずっと言いたい事があって」
「……はい」
「俺、誰とも付き合ってないから」
「……はい?」
「白石さんと俺は、付き合ってない!宮前に聞いて、誤解してたよね?」
「えっ?はい……でも……」
今度は、水野君が混乱しているようだ。
いつかの休憩室で宮前が俺に言った事、そしてそれは宮前の誤解で、その事を宮前も納得したと水野君に話した。
これで水野君も納得してくれれば、白石さんの細かな事まで、話さなくてもいいんだけど……
水野君が、大きく深呼吸をした。
「野球大会の日、塚本さんと白石さんが一緒にいる所を見ました」
「っ!?」
俺は、思わず目を見開いた。えっ、いつ?どこで?
水野君は俯きながら、自分が見た事を話してくれた。
「そっか、見られてたんだ……」
やましい事はしていない。でも、確かに誤解されても、仕方のない行動だった。
よりによって……どうしていつも、水野君なんだ?じゃあ途中から、水野君の様子がおかしいと感じたのは、そのせいだったのか。その事を、水野君に訊ねる。
「あっ……はい。その時は、自分の気持ちにも気付かないフリしてて。動揺している事に、何でだろう?て、さらに動揺するような、グチャグチャな感じでした」
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