489人が本棚に入れています
本棚に追加
ここに入ってきた時、一人でちまっと座っていた水野君を見て、まだ馴染んでいないのかと思ったが……それは、余計な心配だった。
みんなの話を表情をクルクル変えながら、楽しそうに聞く彼女は、立派な野球チームの一員だった。
顔が火照っているのを感じながら、「フゥ~」と息を吐いた。
俺は、酒があまり強くない。ビールの中ジョッキ二~三杯も飲めば、いい気分になれる。
「生、三杯目位ですよね?」
水野君が、俺の顔を覗きこむようにしながら訊いてくる。
「だったかな……?」
うん、何となく気分がいい。
「お酒、そんなに強くないですか?」
「うん。すぐに赤くなるし、強くないと思う」
そう正直に答えると、水野君がクスッと笑う。
「?」と見つめていると、爆弾が落ちてきた。
「かわいいですね」
「っ!」思わず、目を見開く。
「水野君、酒、強い?」
水野君は少し考えた後、上目遣いで、囁くように言った。
「塚本さんよりは、強いと思います」
「っっ!!」
自分でも、何を言おうと思ったかわからない。俺から言葉が発せられる前に、水野君に声がかかった。
「沙映ちゃ~ん、生、頼んで!」
「は~い!他に何か頼みますか?」
と言いながら、水野君は立ち上がった。
特別な事を言われた訳ではないのに、水野君の表情と言葉が、優しく、甘く、俺の中で響いていた──
最初のコメントを投稿しよう!