2/12
前へ
/140ページ
次へ
水野君のいる経理課は二階、俺のいる営業一課は一階。仕事中は、パソコンの前に座っている事の多い水野君。営業で、外に出ている時間が長い俺。 同じ建物の中にいても、たびたび会う訳でもないし会わない日だってある。 初めて会った日に水野君に抱いてしまった、自分でもよくわからない感情。それも、日々の忙しさで段々薄れていく。 そう思っていたが…… 顔を見かけた時、声をかけると満面の笑みで返してくれる。 まだ慣れていない職場で、そんな風にしてもらえる事が嬉しいそうだ。 その笑顔が見たくて、俺たち野球チームのメンバーもまた声をかける。 水野君とは、出勤時間が一緒になる事が多い。俺の姿を見つけると、パタパタと小走りで駆けてきて満面の笑みで挨拶をする。その姿が、また…… この前も、総務課に用事があって二階に上がった時、パタパタと水野君が走って行った。 彼女は、基本“小走り”だ。 水野君の指導をしながら、産休に入った池田君の仕事をこなす小竹君。 多忙な小竹君の手を煩わせたくなくて、経理課を出ると早く戻る為に、つい“小走り”になってしまうそうだ。 あんまり、変わらないと思うけど…… 「廊下を走るな~!」 わざと声色を変えて、水野君の後ろ姿に声をかける。彼女を見ると、からかいたくなるのはなぜだろう?女の子とは、できるだけ関わらないようにしているのに…… ピタッ!と止まると、そ~っと振り返る。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

489人が本棚に入れています
本棚に追加