489人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
赤信号で、ブレーキを踏んで止まる。「フゥ~」とゆっくり息を吐く。
美帆と出会って、わかった事がある。俺にとって斉藤は、大切な『友達』だったという事。
『友達』として、もっといろんな事を話したかった。大学の事、バイトの事、告白された時の対処法、もちろん就職の事も。
斉藤は、どうだったんだろう?斉藤は、俺に何を求めていた?斉藤の求めるものと、俺の求めるもの。違っていたとしたら……もし斉藤が、それに気付いていたのなら……
あの時、斉藤が俺との関係をはっきりさせようとしなかったのは、そういう事なのだろうか?
そんな、今さら考えても仕方のない事を考えてしまうのは、自分の気持ちが動いている事に気付いたから。
水野君と出会って、最初はゆっくりと少しずつそれは動いた。でも確実に動いて、初めて知る気持ちと、忘れかけていた気持ちの両方が、俺の中にあらわれた。
俺は元々、お節介で落ち着きがなくって、イタズラ好きなんだ。
人……女の子と関わるのに戸惑って、人との関わりを、できるだけ避けるようになった。
でも……
水野君には、“素”が出てしまう。ほっとけない、ついついちょっかいを出して、彼女の反応が見たくなる。
いつ頃から?たぶん初めて会った時には、もう……
彼女が、素直な気持ちを見せてくれたと感じたから、俺も“素”が出てしまう。
美帆にも、見せる事のなかった本来の自分。
恋愛にはずっと受け身だったのに、彼女には、受け身だけではいられない。
見た目だけだと、斉藤や白石さんの方がきれいだけど。
彼女の表情、言葉、行動……それら全てが、俺の気持ちを動かす。誰かに惹かれる時、それは言葉で説明できるものばかりではないのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!