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「ワイシャツを汚した」と、眉尻を下げて言う水野君に「洗えばいい」と返した。
水野君の車が置いてある会社の駐車場に向かって、車を出す。
藤田さんに任された“説明”をしようと口を開くが、何をどう話せばいいのか迷っていた。
すると、水野君の方から「教えてください」と質問してくれた。それに答えると「だいたいわかった」と笑った。
えっ、本当にわかった?水野君に「ほんとにもういいの?」なんて確認してしまう。何が、どうわかったのだろう?
教えてほしい事が「ついでにもう一つ」あったらしく、水野君のスマホの画像を見せられる。
「塚本さんが使っている香水って、これですよね?」
「そう、これこれ!」
シンプルに見える長方形に、微妙なカーブがついて……香りだけでなく、ボトルのデザインも結構気に入っている。
母が友人からもらい自分で使いかけたが、男物だとわかって、俺に回ってきた。
それまで香水なんて使った事がなくて、どうするんだよ、これ!?て正直思った。
「まっ、香水なんてあんたの柄じゃないけどね」
という母の一言にカチンときたのと、試しに一度、シュッ!とした時の香りがよかったから使ってみる事にした。
強すぎないのに、余韻が残るような香り。
それから、ずっと気に入って使っている。
以前、水野君に香水の名前を聞かれたけど、俺は覚えてなくて。自分が毎日使っている物なのに……と、ちょっと情けなくなったけど、結局覚えていなかった。
香りだけで探したのかな?……そう思えば、ちょっとくすぐったい感じがする。それって探してる最中は、俺の香りを、思い出しながらって事だよな。
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