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水野君が手の中で、くぐもったくしゃみをした。
「……ごめん!エンジン切っちゃったから、寒くなったね」
笑いを堪えながら、車のエンジンをかける。
「もう!笑わないでください……」
バッグから取り出したティッシュで、鼻や口を押さえながらも、唇を尖らしている水野君。
ひとしきり肩を震わせて笑った後、もう一度彼女を見つめる。
「水野君」
「はい」返事をしながら、背筋を伸ばす。
「俺って元々、落ち着きがなくって、イタズラ好きで、お節介な性格なんだ」
「はい」
「大人になるうちに、人と深く関わる事が面倒になって、笑いながら、周りと一定の距離をおくようにしていた」
「はい……」
「でも君といると、自分でも忘れていた素の自分が出てしまう」
「はい」
「だから、覚悟しといて。君は……君だけは、落ち着きがなくって、イタズラ好きで、お節介な俺と関わる事になるから!」
「はい!望むところです!」
そう言って、ニッコリ微笑んだ。
彼女の額に、そっとキスを落とす。
これからも、よろしく。
俺の、愛しい人……
END
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