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フゥッ!と息を吐く。
「ごめん。その、うまく言えなくて。村瀬君は、魅力的な女の子だと思うけど……」
こういうシチュエーション、一番苦手なんだよ。相手が、求めていない答えを言わなくちゃいけない。でも、中途半端な優しさを見せる方が、ずっと残酷だという事もこれまでの事で学んだつもりで……
「例えば、俺が一番好きなのはラーメンなんだよ。うどんもパスタも良さはわかるけど、やっぱり一番はラーメンで、それは変わらない。俺にとって村瀬君は、パスタなんだと思う」
この例えって、どうなんだ!?でも、もう言っちゃったし……
村瀬君は、クスッと笑った。
「私は、パスタですか……“一番”にはなれないんですね。塚本さんは、“二番”や“三番”をつまみ食いしませんもんね」
「ごめん……」
小さく頭を下げると「塚本さん、謝ってばっかり!」と、村瀬君はまた笑った。
本当は、二番も三番もいらない。大好きなそれだけがあればいい……そこまでは、村瀬君に言えなかった。
「本当は、わかってました。塚本さんの気持ち。でも認めたくなくて、最後の一押しができなかったんです」
いや、俺もずっと逃げてた。言わずにすむのなら……そう思っていたから。
前を見ていた村瀬君が、身体をこちらに向けたのがわかった。
「塚本さんの気持ちは、よくわかりました。だから、最後にお願いがあります」
少し下げた頭をゆっくり起こす。
「一度だけでいいです。私の事、抱いてください」
「っっ!!」
ダメだ……このままじゃ、村瀬君の想いに呑み込まれてしまう!……
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