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「お疲れ!」「塚本、遅い!」等と一瞬の沈黙の後、様々な声が飛んでくる。 「塚本、お疲れ様!」 高野主任から声をかけられる。珍しく、おもしろがるというより、労るような笑みを浮かべている。そんなに、疲れた顔をしているのだろうか? 「一仕事してきたから、今日は特別!沙映ちゃんの隣に座ってよし!!」 『さえちゃん』今日、経理に入った子か。本当に、マネージャーにさせられちゃったんだ…… 笑みを浮かべながら室内を見渡すと、初めての顔と目が合う。 出入口近くに一人で、ちまっと足を崩して座っていた彼女は目が合うと、慌てて隣の席を片付け始めた。 パタパタと空いた皿や箸を片付け、新しい取り皿と箸を置く。 「お疲れ様です。どうぞ!」 座布団を直すと、右手で示した。「襲うなよ!」「沙映ちゃん、気を付けて!」なんて冷やかしが飛ぶ。 「照れるな……」と頭を掻いて、彼女の隣に行く。小竹君に生ビールを頼んでもらい、腰を下ろす。 胡座をかきながら「ごめんね」と、彼女に囁くと、薄く笑いながらフルフルと首を振った。 何と言うか……パタパタと動く彼女の様子は、まるで小動物のようで…… 頭の中で彼女にどんぐりを持たせて、一人で笑った。 スーツの上着を脱ぎ、邪魔にならない所にでも置いておこうと思っていたら、彼女に声をかけられる。 「それ、ハンガーに掛けてきます!」 部屋の隅にパイプハンガーが置いてあるのは知っていたが、いつもは面倒で使っていなかった。 「そっか……ありがとう」 上着を渡すと、彼女はニッコリ笑って受け取り、席を立った。 彼女も、なのか……?温かくなりかけていた心が、少し冷たくなる。
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