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こういう席で、『気が利くフリ』をしている女の子たちに、わりと遭遇してきた。そんな子に隣に座られると後々、何かと厄介になるのだが…… 彼女の屈託のない笑顔に、ホッとしていたのに。複雑な気持ちで彼女を見ると、上着を見つめたまま固まっていた。 「?」そのまま彼女を見ていると、不意にこちらを見た彼女と目が合う。 サッと顔色を変えた彼女は、慌てて上着をハンガーに掛けると、下を向きながら戻ってきた。 俺の上着、何かおかしかった?不思議に思いながら彼女に声をかける。 「ありがとう。俺の上着、どうかした?」 俺の問いに、明らかにギクッ!と肩を震わせた彼女。 「いえ!上着は、どうもしてません!」 顔の前で、片手を大きく振る。だから、そういう姿は……! 「おっきいなぁと、思って。私が着たら、ワンピースみたいかな?とか思ったら、着てみたい!いやいや、そんな事したら、変でしょ!?なんて考えてたら、目が合っちゃって」 しどろもどろになりながら答える彼女に、我慢の限界を迎える。 「プッ!」と吹き出した後、一応笑いを堪えながら言う。 「着てみても、よかったのに」 「すみません」と、すっかり落ち込んでしまった彼女。 おもしろかったから、全然気にする事ないのに。 「みずの さえ さんだったよね?」 そう訊くと、ハッと慌てた顔をした彼女と改めて自己紹介をした。 水野君と話していたら、高野主任をはじめとする先輩たちに、付き合っていた彼女の事を話題にされる。 『元カノ』は年も入社も、俺より一年後輩だ。
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