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「正月休みぐらい、休んだっていいじゃない。紗矢はずーっと、頑張り続けてきたんだから。たまにはさぼらないとね。ラキちゃんのお世話は任せて」
去年の8月、紗矢は元気でかわいくプリティーキュートなやわやわの赤ちゃん・ラキちゃんを出産した。
ラキという名前は「ラッキー」からきている。全然別の話だが、世の中には「希星」と書いて「キララ」と読む子がいるんだそうだ。その字をひっくり返し、紗矢と正一くんは「星希」と名づけた。
正直、俺はついていけない。まず、「星」を「ラ」というのがわからん。それから、「キララ」の3つ目の「ラ」! どこ行った?
いろいろと気になりすぎるが、二人が納得してるならいいとしよう。ラキちゃんもかわいいし。
なのに2018年のどしょっぱなから、こんな修羅場になるとは。アンラッキーにもほどがある。
「ほら、貸して。おーかわいいでちゅねー」
由美子がラキちゃんをそっと外す。俺は紗矢に声をかけた。
「あとのことは父さんたちに任せて、ゆっくり寝てきなさい。睡眠不足なんだろ? ゆうべは助けてやれなくて、悪かったなあ」
「ありがとう。お母さん、お父さん」
紗矢は涙ぐみながら、部屋へ戻っていった。
「ありがとうございます。お義母さん、お義父さん」
「待て正一くん、君は逃げるな」
俺がひと睨みすると、正一くんはぴたりと止まった。
「紗矢にはやめていいって言ってないけど、正一くんには言ってないよ?」
由美子も穏やかな声で攻撃する。
「ギャーッ!」
いいタイミングでラキちゃんが泣いた。
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