第三章・あなたを知りたい

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「どうしたんだ。なんか変だぞ? あの親子に何か言われたのか?」 多分そうだろうな、と思いながらも 一応確認のために訊ねてみると、愛歩は 驚いた顔で俺を見た。 「……どうして? もしかしてなにか 聞こえてた?」 「ということは、やっぱりそうか。 一体なにを言われたんだ?」 指摘すると、彼女はしまったというように 顔をしかめたが、もう遅い。 シラを切るならそっとしておくつもり だったが、これほどあっさりと、自ら 墓穴を掘るとは思っていなかった。 知ったからには、黙っていることは できない。 俺の監視下にあるときに起こったことなら、 なおさらだ。 見逃すつもりはないという意思を込めて、 彼女を見ると、いたずらが見つかった子供の ように、上目遣いで俺を見上げた。 「……ちょっと、気になることを言われて。 でも、宗佑さんに言っても仕方がないこと だと思うから」 「人には言えないことなのか? まさか 侮辱するようなことを言われたんじゃない だろうな? だとしたらあの親子、ただ では済まさない」 「違う、そうじゃない。でも、そのことで 急いで確認したいことがあって……。私が 今失礼したら、優作さんは気を悪くすると 思う?」 そう言って、どこに行ったのかわからない 兄貴の姿を探すように、愛歩が視線を 泳がせた。
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