第三章・あなたを知りたい

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パーティーのパートナーとして誘って おきながら、ほったらかしにされて いるというのに怒りもせずに、まだ あいつに気を遣うとは。 「兄のことを気にすることはない。 俺が後で連絡しておくから」 「でも……」 「心ここにあらずで、また危ない目に 遭うより余程ましだ。行こう」 今夜の兄貴の態度には、俺も少々 頭にきていた。 母の代わりにどうしてもと言われて 気の進まないパーティーに来てみれば、 待ち合わせの場所には愛歩がいて、しかも この会場にいるすべての時間を彼女の傍に いることを余儀なくされている。 着飾って一段と魅力を増した愛歩の傍で、 遠巻きに彼女に関心を寄せる男達の視線を 感じながら、平静を装うことにどれだけ 神経をすり減らしているか。 それもこれも、兄貴のせいだと思うと、 少し懲らしめてやりたくなる。 あんなやつ、愛歩に置いてけぼりを 喰らって、自分の行いを大いに反省 すれば良い。 そもそも交際をはじめたばかりなのに こんなふうな扱いをしているようでは、 兄貴がこの先愛歩を大切にするかどうか 怪しいものだ。 俺だったら、愛歩を一人にするなんて ことは絶対に── ……絶対に──なんだ? 俺はなにをばかなことを考えている。
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