第三章・あなたを知りたい

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握っていた手を放すと、愛歩は手を振って 痛みを散らしはじめた。 「そこまでするほどか?」 「あのね、あなたは自分の手がどれほど 大きくて、力も強いか全然わかってない みたいね。見て、赤くなってるじゃない」 「特に異常は無いように思えるけど?」 差し出された手を見ると、微かに赤くなって いるようにも見える。が、これといって 異常は無さそうだった。 思った通りを口にすると、愛歩は話に ならないと言わんばかりに、小さな ため息を吐いて扉の脇にある、クロークに 行ってしまった。 手持ち無沙汰になった俺は、待っている 間に兄貴の携帯に電話を掛けた。が、 予想通りに応答はなく、仕方なく 留守番電話と、念のためにメール でもメッセージを送り、兄貴が早く 気づくことを願うしかなかった。 ほどなく荷物を抱えた愛歩が戻り、俺達は 会場のホテルを後にした。 *** 土曜の夜だというのに、道路は意外にも 空いていて、この分だと予想よりも早く 目的地に着きそうだ。 ハンドルを切りながら、あれこれとルートの 算段をする俺の隣で、愛歩はまだ大きな目を 見開いて俺を見ている。 「……いい加減にそんな目で見るのは 止めてくれ。それほどおかしなことじゃ ないだろう?」 「だって……意外すぎて。その体格で 軽自動車に乗ってるなんて」 ホテル近くのパーキングに止めた俺の 愛車を一目みるなり、愛歩は驚きを 隠さず俺を見上げた。 助手席に乗せて発進してもなお、この車が 俺のものだとは信じられないようだ。
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