第三章・あなたを知りたい

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「ちょっと用があって寄ったの。 今日はもう店じまいなの?」 「ああ。雅俊達に用があったから。 それでなくても最近は、仕込みを 少なめにしているんだ。ところで、 そちらは?」 「こちらは……、保科さんの息子さんで。 今日は一緒に出かけていて、ここまで 送ってくださったの」 「初めまして。保科宗佑と申します」 「君が、保科の……?」 「え、え。はい。ご挨拶が遅れまして──」 「畏まらなくていい。入りなさい」 「でもお父さん、宗佑さんはもう帰る ところなの。引き止めたらご迷惑よ」 愛歩がなんとか父親との接触を阻止 しようとするが、お父さんは聞こえて いるのかいないのか、さっさと店に 戻って行く。 あまりに無愛想な対応なので、一瞬で 敵と見なされたかと思ったが、仮に そうならば体よく追い返されるのでは? 入って良いかと視線で愛歩に問うと、 彼女は渋々頷づく。 お父さんが何を考えているのか分からず 何やら怖い気もするが、同時に興味も湧いて、 俺は後を追って店内に足を踏み入れた。
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