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「ちょっと用があって寄ったの。
今日はもう店じまいなの?」
「ああ。雅俊達に用があったから。
それでなくても最近は、仕込みを
少なめにしているんだ。ところで、
そちらは?」
「こちらは……、保科さんの息子さんで。
今日は一緒に出かけていて、ここまで
送ってくださったの」
「初めまして。保科宗佑と申します」
「君が、保科の……?」
「え、え。はい。ご挨拶が遅れまして──」
「畏まらなくていい。入りなさい」
「でもお父さん、宗佑さんはもう帰る
ところなの。引き止めたらご迷惑よ」
愛歩がなんとか父親との接触を阻止
しようとするが、お父さんは聞こえて
いるのかいないのか、さっさと店に
戻って行く。
あまりに無愛想な対応なので、一瞬で
敵と見なされたかと思ったが、仮に
そうならば体よく追い返されるのでは?
入って良いかと視線で愛歩に問うと、
彼女は渋々頷づく。
お父さんが何を考えているのか分からず
何やら怖い気もするが、同時に興味も湧いて、
俺は後を追って店内に足を踏み入れた。
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