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「君は保科の息子さんなんだろう?
だったら問題はないんじゃないのか?
とにかく、君にはどうしても聞いて
もらわないと困る」
思わぬことを言われて戸惑った。
今のはどういう意味だろう。
そう思いながらも、お父さんの真剣な
様子に、俺の心は決まった。
そうまで言うなら、俺が代わりに聞いて
後で兄に話せば良い。
「分かりました。そうまでおっしゃるなら」
椅子に深く座り直して、話を聞く態勢を
整えた。
「まずは愛歩の質問の答えからだな」
話し始めたお父さんの表情は暗くて、
この話が気の重い物であることを窺わせる。
それもそうだろう、大方の予想はついて
いるが、自分の娘に話す話題としては、
楽しいことではないだろうから。
「キングフーズの社長夫人だが、愛歩の
言う通り彼女は私の元妻、つまりおまえ達
兄妹の母親だ」
「やっぱり……」
隣の席に座る愛歩が、小さな声を漏らす。
話が始まる前に、彼女は向かい側の席から
俺の隣に移動していた。
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