Prologue

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「話は簡単なことよ。私の実家がレストランを 経営していることは知っているでしょう? 店が経営難に陥っているの。援助を申し出て くれた人がいるんだけれど、その条件は私が 息子さんと結婚することなのよ」 「借金のカタってこと?今どきそんな話が あるなんて信じられないわ。愛歩は本気で そんな結婚をする気なの?」 「ちょっと、美咲、声が大きい」 私の話を聞いた親友が、今にも掴みかかり そうな勢いで言う。 実際二人の間にテーブルがなければ、彼女は 私の肩を掴んで、激しく揺すっていたかも しれない。 今ほどこの親友の存在を、有り難いと 思ったことはない。 彼女が怒れば怒るほど、私は冷静になれた。 こんな台詞がさらりと言えるほどに。 「良いも悪いも、今更やっぱり止めますなんて 言えない。形式だけのお見合いは明日だし、 あちらのお母様は私を気に入ってくださって いるから、断られることはまずないと思う。 私は納得しているの。これが一番良い解決策 なんだって」 「そんな他人事みたいに……。いい?普通の お見合いならいくらでもすれば良いわよ。 出会いの形はいろいろなんだから。大体ね、 お兄さん達は何をしてんのよ!なんで愛歩 ひとりが犠牲にならなきゃいけないの!」 私があまりにも冷静だからだろうか。 美咲がとうとう怒りを爆発させた。
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