Prologue

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偶然にも、このタイミングでフォークを 拾いに来た若いウエイターが、私達の会話を 聞いて目を丸くしている。 それ以外にも、好奇の目がいくつもこちらを 見ていた。 こうなったら堂々としているしかないと、 腹を括って視線を戻すと、美咲の目に光る ものを見つけて私は目を見開く。 彼女の大きな目に、今にもこぼれ落ちそうに 涙が盛り上がっているのを見つけたからだ。 「ちょっと美咲、なんで泣いてるの!?」 「あなたが大馬鹿者だからよ。ろくに 恋愛したこともないくせに。なんで こんな話に乗ったんだか……」 そう言った後、唇を噛む親友の姿に心が軋む。 私の両親は幼い頃に離婚していて、それが トラウマとなっているのかは自分でも わからない。 が、どちらかというと私は昔から、恋愛には 消極的なほうで。 初めての彼氏と上手くいかなかったことも、 ますます私を慎重にさせていた。 初彼以降、長いこと彼氏はいないけれど、 その間男性からまったく見向きもされなかった わけではない。 現在までに有り難くも三人の男性が、私に交際を 申し込んでくれた。 美咲に発破をかけられて、彼等とは お試しデートをしてみたりと、自分なりに 努力もしてみたのだ。
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