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自身の直接の主の主である“神鹿兵庫介”に労わられたことで、若い遣番は緊張が解れたらしく、ついには深志家側の相次ぐ敗戦の報に伝えたことでそれまで敢えて気にしてなかった事実の喜びを隠せなくなった遣番は、歓喜の声を上げ、上げ続けた挙く喉を枯らせたのか、遣番を囲み同様に喜ぶ左膳に水を所望して参ったので、兵庫介はホレと腰に吊るしてある水筒の水を一滴残らず呉れてやって一息つかせ、ようやく落ち着かせた。
「これは面白うなってきた」
そうしてから兵庫介は、両隣に座すひょんひょろと羅之丞に満面の笑顔で声を抑え気味に言い放った。
《……》
ぼんやりした表情を保ったまま、ひょんひょろは沈黙している。
「ふっ♪だが、こうなればこっちのモノ、深志の不逞な奴原どもに目にもの見せて呉れん!」
《兵庫介様》
「うん?」
《いまより御社様のもとに参りましょう》
ひょんひょろはこれまで見せたことのない満面の、より正確には口元の笑みを以て、兵庫介に顔を向けたのだ。
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