2人が本棚に入れています
本棚に追加
ランチタイムは同僚と、何気ない会話のやりとりをするのが社会人というものだ。天気の話、ニュースで取りだたされる事件の話、上司の愚痴に、昨日のドラマ。
「ねぇ、美咲ちゃんはなんで、旦那さんと結婚したの?」
急に話が飛ぶこともしばしば。興味があるとかないとかではなく、話題を探すのが女子というもの。
「なんでって、素敵な人だからだよ」
即答する私に、ニヤニヤとしながら彼女は続ける。
「素敵って、どんな風に? 美咲ちゃん可愛いから、旦那さんもイケメンなんでしょ?」
「全然だよ。普通の人。ぽっちゃりだし、顔がイケてるかどうかって言われたら、一般的には不細工の部類」
「またまたぁ。謙遜しちゃって可愛いんだから。写メとかないの?」
決して謙遜ではない。イケメンな旦那を想像しているだろう彼女の欲求に応えることはとても出来ないけれど、ここで渋ればいつまでもこの話題は終わらない。連日写メ見せろ攻撃が続くだろうことは容易に想像できる。
なので、ツーショットで写る携帯の待受画面を彼女の目前に差し出す。
「ーーーは?」
予想通りの反応が可笑しくてニヤける。
「ね? イケメンじゃないでしょ?」
携帯をポケットに戻して卵焼きを頬張る。
「ちょっと、何それ。冗談でしょ? なんでそんな奴と結婚したの?」
不快感を露わにする彼女。人の旦那にそんな奴とは、本当に失礼な人。
「なんで? 素敵な人だよ?」
「ありえないわ。私だったら絶対無理。そんな奴とキスしたり、セックスとか、無理無理。気持ち悪っ」
なおも彼女は失礼な発言を続ける。キスもセックスも普通にしてる妻が今あなたの目の前にいるんですが?
「菜津美ちゃんが無理でも別に関係ないじゃん? 私の旦那なんだから」
「ねぇ本当に、そいつのどこがいいの?」
「いつも優しくて、私を大切に想ってくれるところ。菜津美ちゃんには一生わからないだろうけど」
少しだけ、嫌な言い方をしてみる。彼女はあからさまに不機嫌な表情を見せる。
最初のコメントを投稿しよう!