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「何それムカつく。分かった! お金いっぱい持ってるんでしょ! 社長とか? 年収いくら?」
「普通のヒラのサラリーマンだよ。一応ホワイトな会社。給料も私達と変わらないくらい」
淡々と答える。それを聞いて目が点になる彼女。
「ーーーそうなの? え、全然理解できない」
私も彼女の頭の中が理解できない。
「旦那さんの魅力って何?」
「優しいところ。愛情深いところ。一緒にいて癒やされるし、どんな時も私が私でいられるところ」
お弁当箱に残る最後のハンバーグを持ち上げて、朝の彼の笑顔を思い返す。
「このお弁当、旦那が作ってくれたんだよ」
今日も美味しくいただきましたよ、旦那様。
「ごめん、全然わかんない」
お弁当箱の蓋を閉めて、片付けを始める。
「菜津美ちゃんは、どんな人と結婚したいの? 今の彼氏さん?」
質問を返してみた。返ってくる答えは、おおよそ予想がつくけれど。
「やっぱり顔でしょ! 次に年収。二千万はないとね。今の彼氏はイケメンだけど、あいつ金持ってないから。この前のデートもディナーはホテルのレストランにしたのに割り勘だし。流石に結婚できないわ」
「顔が良くてお金持ちな人なら、性格が悪くてもいいってこと?」
「いいにこしたことはないけど、性格なんて福神漬けみたいなもんでしょ」
福神漬けの意味がわからないけれど、彼女の結婚の条件はわかった。頑張ってください。
「ところでさぁ、今日仕事終わってから彼氏とその友達とごはん食べに行くんだけど、美咲ちゃんも一緒に行かない? 友達には初めて会うから緊張しちゃってー。美咲ちゃん居てくれると助かるんだよねー!」
「帰ってごはん作らないと行けないから」
即答した。にも関わらず彼女はしつこく誘ってくる。断り続ける私の携帯がタイミング良く音を出す。旦那からの着信だった。
「もしもし? どうしたの?」
席を立って出た電話の内容は、会社の人に食事に誘われ断っているのだがしつこく誘われててどうしようという、なんとも笑える内容だった。私の状況も伝えると、二人で笑った。そして私達夫婦は、今日はお互い誘いを受けて食事をしてこようと決断したのだった。
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