2人が本棚に入れています
本棚に追加
向かった先は、駅近くの小路に先週新しくオープンしたお洒落なレストラン。定時で上がったおかげか、すでに満席に近い状態の店内でもすんなりと席に通された。可愛いお店ねとハシャグ彼女は先程までとは違い、女の顔をしている。
しばらくして男性二人組がやって来た。世に言うイケメン。どちらも長身で、さわやかな感じ。第一印象は、思っていたよりちゃんとしてそう、だ。
「あっくん遅いよー! 菜津美たち超待ったんだからねー! もうお腹ペコペコだよっ」
大変身を遂げる彼女に心の中で苦笑い。誤魔化すように水を飲む私。
「ごめんごめん。これでも急いで来たんだよ。その子が菜津美の友達?」
「そう! 船橋美咲ちゃん。超可愛いでしょ!」
「初めまして。俺は加藤彰宏。菜津美がいつもお世話になってます」
あっくんとやらに会釈をする。そして隣の彼を見る。
「こいつは俺の大学からの友人、橘翔平。菜津美も、翔平と会うのは初めてだよな」
「うん! よろしくね翔平くん! あっくんの彼女の、薗部菜津美でーす!」
そのままのキャラで通すつもりなのか、普段仕事で関わる彼女と同じ人物には到底思えない。吹き出してしまいそうなのをギュッと堪える。
「よろしくね、菜津美ちゃん、美咲ちゃん。翔平って呼んでね」
翔平がニコリと挨拶する。そして注文へと移るのだった。
料理が来るまでの間、あっくんと菜津美の馴れ初めやら、あっくんと翔平の大学時代の話やらを聞かされ、その間私は、旦那は今頃どこで何を食べてるのかと想像を膨らませていた。
「美咲ちゃんは? 彼氏いるの?」
サラダが運ばれて来ると同時に、翔平が私に問いかけた。
「旦那がいます」
「え! 既婚者なの? てっきり独身なのかと思った」
間髪入れず、あっくんが反応する。
「そうなんだー。指輪してないし、可愛いし、俺狙っちゃおうかと思ってたのになぁ」
今度は翔平が、わざとらしく肩を落とす。
「結婚指輪じゃなくて、時計にしたんです。ていうか菜津美ちゃん、結婚してるって伝えてくれてなかったの?」
「えー? だってぇ、その方が盛り上がるかと思ってぇ」
ごめんねっ、と謝る彼女は全然可愛くない。
最初のコメントを投稿しよう!