11人が本棚に入れています
本棚に追加
門を一歩入ると、とたんにしめった空気がボクの体にまきついてきた。霧のシャワーをあびているみたいだ。
雨やしきの中は薄暗くて、迷子になりそうな深い森が広がっていた。いろんな種類の木が重なり合うように生えていて、あちこちの葉っぱから、しずくがポタポタと落ちてくる。
十歩も行かないうちに霧は雨に変わった。柔らかい絹糸みたいな雨に濡れながら、僕らは森の中の小さな道をたどって行った。
しばらく歩くと、とつぜん森が途切れ、目の前がパーッと開けて、真っ正面に大きな洋館があらわれた。真ん中が高くなっていて、羽を広げた鳥みたいで、絵本に出てくるお城のような建物だった。
前の庭には、花、花、花がこれでもかというほど、すきまなく咲いている。
うすい色や、こい色があるけれど、どれもみんな紫色だ。
バラや、桜草、ゆり、すみれに似ている花、あじさいみたいのもある。
でも、どこかが少しずつちがっていて、いままでに一度も、見たことのない花ばかりだった。
最初のコメントを投稿しよう!