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──それはGWが明けた日のお昼休み。
彼は私の平々凡々とした高校生活に、いきなり大股で踏み込んできた。
(あ、テニスボール……?)
中庭を突っ切る渡り廊下を歩く私の足元を、コロコロと黄色いテニスボールが通り過ぎて行く。
私と同じようにとてものんびりと……、いえ、トロくさく。
事実、そんなボールを目で追っている間に、一緒に歩いていた友達の背中はみんなずいぶん先へ行ってしまっている。
(あぅ……置いていかれちゃった)
でも、行き先は次の授業の化学実験室だとわかっている。
私は腰を屈めてそのボールに手を伸ばした。ゆるゆると頼りなく転がる様に、なんとなく親近感を覚えてしまう。
(あれ……? 思ったより速かった)
伸ばした私の指先をすり抜けて、さらに転がっていくボール。
(まてまてまて)
追いかけて、しゃがんでいる間のタイムラグを突いて、ボールは尚も先へと転がっていく。
(ええー……? よぅし)
”素早く先回りして捕まえよう”と、私は駆け出した。もう少し、もうちょっと先まで回り込んで……
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