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「みま? それが名前か? やっぱり猫っぽい」
クスリと笑った口元に、彼は軽く立てた親指をあてる。
「みまも可愛いけど、俺が呼ぶ時はやっぱタマだ。愛称ってやつ」
(……!)
その笑顔に、私の胸の中でリンリンと小さな鈴が鳴り出した。
震えるように小さく、でも高く。
まだ繋がったままの手を通って、その音がこの人に聞こえてしまいそう。
「じゃあまたな、タマ。ボールさんきゅ」
離れていく大きな手。ホッとするのと同時に、追いかけたいような寂しいようなおかしな気持ちになる。
「いいえ……」
遠くなっていく背中につぶやくと、彼はテニスコートにいる友達らしき男子生徒の輪の中に戻っていった。
大胆にベルトを緩め、はみ出したシャツをズボンの中に押し込みながら。
(きゃ……! ここ中庭だよ……)
「美繭。今、吉祥先輩となに話してたんだ?」
突然後ろから掛かった低い声に、私の心臓がピョンと跳ねた。
「あ、柊くん……。きっちょ?」
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