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「雨の日には赤井さんが現れる」
「赤井さんは、雨の日に交通事故で死んだ女の霊」
「赤井さんの全身が真っ赤なのは、体中が血塗れたから」
「赤井さんは、傘もワンピースも長靴も、みんな真っ赤なんだって」
「赤井さんを見かけても、絶対に目を合わせてはいけない」
「目を合わせてしまったら、血の池地獄に連れて行かれてしまうから」
小学校のくだらない噂話、怪談、都市伝説。
どこにでもある話。
私は、そんな怪奇譚の主人公になりきるのが大好きだ。
だから雨の日には、真っ赤な傘をさして、真っ赤なワンピースを着て、真っ赤な長靴を履いて、外に出る。
この姿でちょっと遠くの公園まで行けば、もう誰も私を知っている人はいない。
だから、みんな驚いてくれる。
私は良い気分になって、もっともっと遠くまで出かけて、みんなを脅す。
今日はとても調子が良い。会う人、会う人驚いてくれる。
小さな子なんて、泣きそうになってる。
バカみたい。赤井さんなんて、ただの噂話。本当にはいないのに。
それにしても、今日は随分と遠くまで来ちゃったな・・・。
あの本屋の曲がり角まで行ったら、今日はもう帰ろうか。
曲がり角まで行った時、角から突然女の子が現れた。
どこかで見たような姿の子。
私と同じ、真っ赤な傘をさして、真っ赤なワンピースを着て、真っ赤な長靴を履いてる子。
私はその子の上から下まで眺めてから、視線を前に戻す。
ふと、その子は傾けていた傘のすき間から顔を覗かせた。
血塗れた様な真っ赤な瞳。
その子と目が合った瞬間、私は真っ赤な池に落ちていた。
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