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デモンストレーション1
「これを聞いているってことは俺はもう死んでいるんだな。本当にみんなには良くしてもらった。その恩返しができることが俺は嬉しい。死ぬ恐怖よりもそっちが勝るんだ。だから俺一人で決着をつけるよ。みんなありがとう……」
機動要塞ツクヨミのブリッジは慌ただしくなっていた。
指令席に腰かけるのはまだ10代ぐらいの豪華な装飾がされた軍服の少女。 モニターを見つめる瞳は大きく、鼻筋も整っおり唇もぷっくらとして美少女という言葉が似合う。まだ幼いにも関わらずその立ち振る舞いは気品に溢れていた。しかし、今は苛立ちを隠せず栗毛色の髪をくしゃくと掻きながら遺言動画を鬼の形相で眺める。
少女は黒刀を大切そうに抱え唇を震わせるとクルー達に向かって大声で叫ぶ。
「あのバカを迎えに行くのじゃ!」
その声にオペレーター達は必死で答えている。
女の子の後ろに控えていた眼帯の初老紳士が状況をまとめ報告をする。
「お嬢様。識別コード及び探査レーダーにもかかりません。どうやらステルスで行ったようです」
「あのバカ! どれだけ心配をかければ気が済むのじゃ?」
思えば初めて会った時もそうだった。
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