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これも仕方ない事だ。デモンストレーションでよく見る光景の一つ。現戦闘において近距離武器では遠距離武器にまず勝てない。d605の様に防御に特化させることで距離を詰める事ができれば勝機はあるがそれ以外はハチの巣にされるだけだ。弾除けに高い金は払えないし近距離武器に特化した俺を買おうとする者はなかなかいないだろう。それでもわずかには期待していたのかもしれない。
目をつぶる。
ここまでだな。廃棄されるぐらいなら死んだ方がましだ。
輝生通話でs902に呼びかける。
「おめでとう。s902、これからも頑張ってくれ。最後に俺から頼みがあるんだがいいか?」
「何だい?」
「買い手がつかなかったら俺を殺してほしい」
「いいのかい? 廃棄処分になった奴からも売れた奴はいるよ」
「いや、決めてたことだから」
「わかった」
静寂は続く。
俺に買い手はつかなかったようだ。
「それではこれにて販売を終了させて頂きます」
ちょび髭は木づちでカンカンと高らかに鳴らす。
その瞬間、俺の死は決まった。
天を仰ぐ。
ここで終わりか……。
心は穏やかであった。
「今までありがとう」
s902が最後の輝生通話をする。
「こちらこそ」
バンという音が一度だけ鳴り響く。
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