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第五神話 神様!マユリを助けてください! ①
母さんが再婚し、俺の名字が神様になってから1年以上が経過していた。高校二年生になった俺は、神様という名字にもすっかり慣れていた。妹のマユリも小学校4年生になった。
「私は小学校4年生にして、かなり大人の女性になった!」
と豪語するようになったマユリだったが、未だに夜中のおしっこは“連れション”させられる。
季節は、短すぎる秋を通り越し、厳しい冬に移り変わった。今日は12月24日のクリスマス・イヴだ。当然、彼女のいない俺のクリスマス・イヴの予定は、夜の6時から9時まで居酒屋のバイトで、終わったらすぐ家族4人でクリスマスパーティをすることになっていた。もちろんマユリの提案だった。
しかし、マユリは昨日から発熱してしまい、今日も朝から寝込んでいた。熱が出た時点で母さんがかかりつけの病院に連れて行ったところ、風邪の診断がおりた。処方された薬を服用しているが、昨日の今日だからだろうか、状態はあまり回復していない様子が伺えた。
「俺、バイト休もうか?」
「ううん…。大丈夫。その代り早く帰ってきてね。パーティ、絶対するんだから」
「分かった。約束する。もうすぐ母さんも帰ってくるだろうから、ゆっくりお休み」
「うん。」
俺は、マユリのおでこに貼ってある冷感シートをそっと剥がし、新しいシートに貼り換えた。
「じゃ、行ってくる」
「はぁい。いってらっしゃい」
玄関のドアを開けると、冬の厳しい風が待ち伏せをしていたかのように、一気にボロアパートの隅々まで入り込んだ。マユリの風邪にさわってはいけないと思い、俺は慌てて玄関を閉め、鍵をかけ、バイトへと自転車を走らせた。
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