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クリスマス・イヴということもあり、お客さんが大勢来るだろうと気合を入れてバイトに臨んだが、平日レベルの客入りであり、ほとんどが中高年の常連さんばかりだった。7時30分をまわったところで、(あと1時間30分か……)そう思っていたところ、
「おーい神様ー!お母さんから電話ー!急ぎだって」
店長が電話の子機を持って厨房から現れた。
「もしもし?どうしたの母さ…」
「和也!大変なの!今マユリが痙攣を起こしてるの!」
「は?なんだよそれ!え、ただの風邪なんだろ!?」
「分からない……分からない!」
「きゅ、救急車!救急車を呼んで!」
「いま洋一郎さんが119に電話してくれているの!」
母さんが話す後ろあたりから、新しい父さんである神様 洋一郎が、救急隊と電話で話している声が聞こえた。
「俺は!俺はどうしたらいい!」
「とにかく早く帰ってきて!」
そう言って母さんが電話を切った。店長も横で俺が話しているのを聞いてくれており、電話を切ると間もなく、神様、すぐ帰れと言ってくれた。
俺はすぐさまバイトのユニフォームの上からジャンバーを羽織り、持ってきた着替えや荷物もスマホも全てロッカーに入れたままバイト先を飛び出し、力の限り自転車を漕いだ。
駅前にある居酒屋から自宅までは、どれだけ頑張っても15分はかかる。
(マユリ!マユリ!マユリ!どうか…どうか無事でいてくれ!)
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